精神科看護師が考える患者の自殺に直面する医療者の支援について

医療現場で働いていると、少なからず患者の死を経験します。

身体科の場合は、身体疾患に伴う患者の死を経験することが多いと思いますが、精神科の場合は、自殺という患者の死に関わる機会が多いです。

日本では、自殺対策基本法や、自殺対策基本法に伴う政府の指針として自殺総合対策大網が挙げられており、様々な対策が取られています。

一方精神科において、実際の臨床現場で出会う患者は希死念慮を持った方や、自殺未遂をした方もいて、自殺に関わる機会があります。

精神科の現場では、患者の自殺を防ぐため、患者の状態に変化が生じれば、看護師全体で密な情報共有を行います。

それに伴い、より自殺リスクの高い患者への関りを強化する、あるいは患者の状態に合わせ巡視を頻回に行います。

しかしながら常に患者を見守ることは限りなく不可能です。

自殺をしたいと考える患者、希死念慮が行動化につながった場合は、状況に応じて拘束せざるを得ない場合もあります。

そういった行為を行っても、医療者がどれだけ努力を積み重ねても、環境を調整しても、患者の自殺を完全に防ぎきることは難しいのが現状です。

そして患者の自殺に遭遇した看護師は心は大きく傷がつきます。

患者の自殺に遭遇した看護師の捉え方は様々です。

私が初めて患者の死を目の前で経験した時、そしてこんなにもあっけなく患者は死んでしまうんだという漠然とした感情。

それに加え、悲しみと恐怖と絶望感、そしてやりきれなさを感じました。

蘇生に成功しなかった時、体の全身の力が抜け、その場で倒れこみたくなる気持ちになりました。

患者の自殺に直接経験したその日の夜、私は浴びるように酒を飲みました。

適切なコーピング行動だったとは思いませんが、そうせずにはいられませんでした。

どれだけ酒を飲んでも酔わず、とにかく気持ちは沈み続けました。

日本は患者の死を語るのはタブー視されている文化がより濃い国だと思いますが、精神科の世界においてもそれは同様の傾向にあると体感しています。

患者の自殺がなかったことのように、誰も患者の自殺にふれず、そして何事もなかったかのように働き続ける看護師の姿に悲しみと、そして自分自身でも理解しきれない怒りを感じるときもありました。

とはいえ、私の場合は、直接患者の自殺に関わったスタッフとして、上司から定期的に声をかけて精神的なフォローを頂いたこともあり、何とか目の前の業務に向き合えるようになってきました。

患者の自殺を目の前で体験して、しばらく時間が経過しましたが、未だにその方の顔がはっきりと頭の中に浮かびます。

やりきれなさ、悲しさ、絶望感は当時の記憶が頭の中にこべりついているようにはっきりと感じる事が出来ます。

患者の自殺に遭遇した看護師は、PTSDに繋がる可能性があることも指摘されているように、看護師はそれだけ大きな精神的衝撃を受けていることが分かります。

患者の自殺を経験して、それでもなお医療者は前に進まなければなりません。

しかしながら、患者の自殺に遭遇した看護師は時にその病棟であるいは病院で働く自信を失い、病院を去ったり、最悪の場合看護師という仕事自体を辞めてしまう事に繋がりかねません。

そういった看護師を少しでも減らすためには、そしてこれからも看護師が看護師でいられるために、必要な精神的支援を必要なタイミングで受ける事が必要であり、その一連のサポートを通して、心の傷を修復させるプロセスが必要だと思います。

私の場合は、直属の上司が精神的フォローをしてくれましたが、場合によっては病棟スタッフ同士が声をかけあったりすることも大切な事だと私は思います。

実際に患者の自殺に遭遇した看護師を中心とし、臨床心理士が介入して行われるデブリーフィングの実施も新たな事実の発見や、自責感を軽減するためのヒントが見つけられると思います(適切なタイミングと方法で行われないと、さらにトラウマが遷延する可能性があると指摘もある)。

また病棟スタッフ同士だからこそ言いにくい事もあると考えられるため、必要であれば中立的な立場の臨床心理士の介入や、もし院内にいるのであれば精神看護専門看護師の介入なども一つの方法だと思います。

あとは事前に患者の自殺を経験した看護師はどのような心理や考え方に陥るのかといった心理教育も一つの支援の方法だと思います。

事前に自殺に遭遇した看護師の心理や考え方を教育しておくことで、患者の自殺に遭遇した時の気持ちは誰もが感じる事であるという認識が持てれば、周りに助けを求めやすい環境に近づくと思います。

看護師もまずは一人の人間であるという事を忘れてはいけないと私は常々思っています。

看護師は人一倍責任感が強い人が多くいる印象がありますが、一人ですべてを背負い込もうとすると心のどこかで必ず歪が生じます。

誰もが完璧で、常に笑顔でいられるような看護師にはなれませんし、私はそうなってはならないのではないかと思います。

つらいときはつらいと言えるメンバーが周囲にいて、そして適切な環境があって、看護師の心は癒され、前を向けるようになるのではないかと思います。

実際の医療現場は多忙に多忙が重なりより煩雑な環境であることが多いですが、誰もが少しずつ周りを見ることが出来れば、そんな一人孤独に耐える看護師も少なくなるのではないかと思います。

患者の自殺によって支えられるべきなのは患者の家族は当然な事なのですが、患者の自殺に遭遇した看護師も看護の対象であると私は思います。

患者を一生懸命に看護する看護師が、もっともっと大切にされて、元気でいなければ、良い看護は体現できないと思います。

患者の自殺に遭遇した看護師の支援がもっと充実し、もっと看護師達が守られるような環境が出来てくると良いなと思います。

そしてそんな職場の環境をつくれる看護師になりたいと私は思っています。

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ABOUTこの記事をかいた人

「看護師としてのキャリアってなんだろう」 と日々考えているとある看護師 新人からHCU配属。HCU,ICU,ER経験。 新しいチャレンジをしてみたいと考え、思い切って企業に転職。外資系医療機器メーカーのクリニカルスペシャリストとして働きだす。 企業で働き始め、「やはり看護は面白かった」と再考。 再び看護師へUターン。 「どうせなら新しい看護にチャレンジしよう。」と精神看護の道へ。 現在精神看護師として救急病棟で勤務している。 学歴 専門学校卒→放送大学卒(教養学) 学位授与機構で看護学士取得済